「納豆の食文化誌」横山智著(農文協) 納豆の世界は大きくて深い!

日本の納豆、世界の納豆、学術的情報量はもちろん、出会いと考察の面白さに思わず引き込まれるとても読み応えのあるすごい本です。

「納豆の食文化誌」横山智著(農文協)(2700円+税)

納豆の食文化誌

横山智先生の最初の納豆本「納豆の起源」(NHKブックス、2014年)では、納豆は日本の食べ物と思っていたのにミャンマーやラオス、ネパールなどのアジアの国々にも納豆があって、しかも、納豆の種類も料理としてのアレンジの仕方も日本よりずっと豊かだ、と驚かされました。

さて、今回は未調査情報がプラスされただけでなく、「納豆はおかずなのか調味料なのか」という視点で様々な種類、地域、時代の納豆に対して展開される考察におもわず引き込まれてしまいます。私も今までブータンやナガランドで納豆を食べてきましたが、そこまで考えていなかったなぁ・・・。

そして、スーパーで売っている「誰にでも食べやすい臭みを抜いた納豆」しか知らなかった私は、お餅と一緒にお正月料理として食べる、などびっくりするような納豆の食べ方があることに、目からウロコ、ディスカバー・ジャパンでした。歴史好きな人なら古い文献から納豆がどのようにして今の納豆になったのか、明確な答えがないことなだけに自分の考えを膨らませるのも楽しいでしょうね。

自然界(藁の表面とか)にいる菌の利用ではなく純粋培養の納豆菌を吹きかける方法によって衛生的で安価な納豆生産を可能にした技術革新の一方で、納豆の多様性が消えていったことは寂しいです。でも実は今でも昔ながらの技術を受け継いで納豆作りをしている人に感動しました。クラフトビールの静かなブームのように、納豆作りに挑戦しようという人もでてくるはず。納豆の豊かさをあらためて知って、これからもっと納豆を食べたくなる本でした。

奥武蔵納豆

なんと私の住む飯能市にも!地元産の大豆、納豆菌も地元でとこだわる「奥武蔵納豆」。昔の納豆の臭いと力強い食感、パワーを感じる納豆に感動しました!!