エマダツィの「ダツィ」はフレッシュか熟成か?ブータン人のチーズへのこだわり

エマダツィ(エマ=唐辛子、ダツィ=チーズ)

ブータンの国民的料理、唐辛子のチーズ煮。

日本でもブータン料理イベントでエマダツィを食べる機会があるけれど、どこか違う。ブータン旅行中にホテルで出されるエマダツィもやっぱりちょっと違う。どこか嘘っぽい(←もうちょっと言葉を選べないのか^^;)

ブータンの友人の家でご馳走になるエマダツィは、それぞれの家の作り方があって同じではないけれど、みんな美味しい。どれもエマダツィだ!と嬉しくなる味だ。みんな、自分の美味しさに忠実に作っているからかな。

 

こちらは、ブムタンのレキロッジの友人が作ってくれたもの。フレッシュな唐辛子が手に入る季節のエマダツィ。チーズは田舎の親戚が送ってくれたそうだ。やや汁気が多いタイプ。辛さとチーズのコクの相性が抜群で、このスープのところを何回もお代わりしてしまった。

エマダツィ

 

こちらはティンプーの友人宅でいただいたもの。トマトやバターもたっぷりで、濃厚な感じ。

エマダツィ

 

エマダツィに使うチーズは牛のミルクから作る。バターを作った後の脂肪分を取り除いたミルクを加熱し、タンパク質を凝固されたカッテージチーズだ。

ローカルチーズだけでなく町のお店で売っているインド製のプロセスチーズを使ってもよい。

ホテルの料理にはインド製のチーズが使われているので、ブータンのチーズを知っていただこうと、ツアー中に農家でチーズ作りを見せていただいた。

チーズ作り

 

この段階では発酵させてはいないので、さっぱりしていてちょっとパラパラした感じ。自家製への愛着が強く、田舎の親戚からチーズを送ってもらう人も多い。もちろん市場でも買える。
作りたてのチーズ

 

私がブータンに滞在していたとき、市場でチーズを買ってきたらすぐに使わずに常温で数日おいて、表面がソフトになったら使うように教えられた。表面の色が全体的に黄色と白っぽくなる。エマダツィを作るときにこの外側部分だけを剥ぎ取っていれると溶けやすく、味もとても良くなる。

料理上手な友人の家では、表面を発酵させたチーズをたくさん冷蔵庫に入れていた。表面を削るとフレッシュな部分が露出するのでまた常温で発酵させるそうだ。

熟成チーズ

 

「ブータンのチーズは表面を発酵させてから使う」

これが、美味しいエマダツィの極意だとずっと信じてきた。

ところが、数年前からこの信念がぐらついている。

私が師とあおぐベテランガイドのキプチュさんが、エマダツィにフレッシュなチーズを使う、と言うのだ。

キプチュさんの出身地のハの習慣なのか、それとも単に発酵チーズ派とフレッシュチーズ派がいるだけのことなのか、それともブータンの食文化の変遷にかかわる重大なヒントなのか。

ささいなことだけれど気になって仕方ない。