お茶パックでラック染め+発酵させたら?Lac dye experiment

2021年5月5日

ブータンのラック染めの実験

1.ラックの樹脂をお茶パックを利用して簡単に分離させる
2.染液を発酵させて染めてみる(ブータンのブムタン地方の染め方検証)

をやってみました。

<使用量>
ラック5g、水1.5リットル、穀物酢15ミリリットル、焼明礬液(0.2%)、みやこ麹5g、乾煎りした大麦4g

 

1.ラックを小さく砕く

ラックは、ラックカイガラムシが自分の体のまわりに分泌した樹脂と蝋の塊に埋もれている。このまま煮ると樹脂分が溶けてベタベタになり、鍋も糸や布に付着してしまう。ラックを細かく砕いて熱湯よりやや低めのお湯(85度くらいかな)に入れて軽くまぜて5分くらいおいてから布などで濾せばよいのだが、それも面倒なのでお茶パックに入れてみた。

ラック染め

 

2.お茶パックに小分けにして煮る
砕いたラックをお茶パックに入れて(密にならないよういくつかに分けて)そのまま水に入れて加熱した。(お湯からでも良いけれど待っているのもなんだし・・・・)。お茶パックでラック染

 

3.5分沸騰させてみた
高温になるとすぐ濃い色になったが、一応5分間沸騰させた。今回は水の全量で一気にやってしまったが、2回に分けて煮出したほうがラックの色が十分出尽くしたかどうか分かっていいかも。お茶パックはそのまま捨てればいいし、鍋についた汚れは鍋が熱いうちにスポンジで軽くこするだけで簡単に綺麗になる。
簡単に洗える鍋

 

4.酢を加えて煮染めする

次の発酵実験のために染液を半分に分けた。すぐに使うほうに酢を加えた(pH4)。染液の色が薄くなるので一瞬心配になるがこれでOK。加熱し沸騰したら、あらかじめぬるま湯に浸しておいた絹と綿布を入れて10分間沸騰をキープした。この段階では布にはあまり色が入らなかった。

煮染め

5.明礬で媒染

かるく水にくぐらせてから明礬液に20分浸した。20分後にはピンク色がはっきりしてきたが、まだ色は薄い。
媒染につける

 

6.さらに煮染め10分

かるく水にくぐらせてから同じラック染液に戻し、10分間沸騰をキープ。媒染しているので、瞬速で色が濃くなっていく。快感!10分後には綿もだいぶ濃い色になってきた。
染液

 

7.水で洗う

濃く染まったのは絹。綿も絹ほどではないがピンク色に染まった。染液を見るとまだ色素は残っているので、もういちど媒染して染めたらもっと濃くなるだろう。でも実験なのでここでおしまい。染め上がり

 

発酵させてみる

1.麹と大麦を加える

半分に分けた染液に、みやこ麹5g、乾煎りした大麦4gを加えた(左の写真)この時点では50度くらい。翌朝、次の朝も50度くらいに温めて発酵させた。前回腐敗させてしまいほとんど染まらなかった(強烈に臭かった!)ので、今回は浅い発酵にとどめた。左は麹と大麦をいれたばかりの状態。右は2日後に取り出した大麦。

ラックを発酵させる

 

2.煮染め10分

浅く発酵させた結果pH4.5になっていた(酢は入れていない)。やや濁っている感じ。比較のため同じ条件(煮染め10分、媒染20分、煮染め10分)で染めてみる。見るからに染まりにくそう・・・そしてやっぱりあまり色が入っていかない・・。
ラック発酵染め

 

3.媒染20分

かるく水にくぐらせてから明礬液にいれたばかりの状態と20分後の様子
媒染中

 

3.再び煮染め10分

かるく水にくぐらせてから染液に戻して再び煮染め。媒染したのである程度色は入っていった。
ラック発酵染め

 

4.結果

発酵させたものは染まりにくかった。麹の違い?単に失敗?
ブータンのブムタン地方では、大量の糸をラック染するときに発酵させる方法を行う。そのほうが少ない量のラックで多くの糸が染まるから、という理由。もしかしたら発酵させることで染まるスピードにブレーキをかけて多くの糸に色素が行き渡るようになる、という考え方もあるかな?これ以上先は、ブータンに行って居候して染めてもらうのをじっと見るしかなさそう。

左:発酵させずに染めたもの  右:発酵させて染めたもの(上:絹、下:綿)
結果