女性はみんな機を織る 忘れられないブータン・ゲンパカップ村 

織名人ジャンベさんのふるさとゲンパカップ村は、東ブータンのとっても奥地にあります。
ジャンベさんに初めて連れていってもらったのは、2013年のことです。
その頃はすでに「母から娘へ」と受け継がれてきたブータンの織りは、近代化の波の中でほとんど失われていまし。しかしゲンパカップにはまだその伝統が残っており、そしてまた女性たち全員の織りのレベルの高さにふれ、私は今までブータンの何を見てきたのだろう・・とショックでした。

その後、ツアーではガイドに「同じものが他でも見られるのになんでわざわざ苦労して行きたがるの?」と不思議がられましたが、みなさんに「ここまで来てよかった」と言っていただき、嬉しかったです。

 

道路

2013年に行ったときには、道路は建設中で車は通れずにトラクターに乗せてもらいました。ツアーでは麓の村から四輪駆動車に乗り換えて村に向かいました。

 

村の風景

ゲンパカップ村。尾根のてっぺんのゲンパ(僧院)を守る小さな集落です。農業を営む大きな畑はなく、女性が機織りをして暮らしを支えます。寒くなく、暑くなく、気持ちのよい村です。

旧友

久しぶりに村に帰ったジャンベさん(左)。旧友を訪ねました。彼女は若いころ、とっても早く織れる織り手だったそうです。手にしているのは自分で織った帯。この帯はヤン(守ってくれる宝物)として大切にしているそうです。

中学生

ゲンパカップには学校も病院も商店もありません。子供たちは寄宿舎のある遠くの学校に行きます。冬休みで村に帰っていた中学生が、自分で織った民族衣装用の布を見せてくれました。総シルク、隙間もないほどぎっしりと模様を織り込んでいます。このレベルの高さ!ゲンパカップの中学生、恐るべし。おばあちゃんも織りの名人だったそうです。

整経

こんな狭いところで目にも留まらぬ速さで整経をしていました。よく数がわからなくなってしまわないなぁ・・・。「工房」なんてないんです。暮らしの一部ですから。

はたおり

電気が引けてから何年たつのでしょう。それほど昔のことではありません。家の中は暗いので外に織り部屋をしつらえていました。気持ちよさそうですね。

織り

家の中で織っている人も多いです。光のさす窓辺。この写真は三角形になっているブータンの機の様子がよく分かります。斜めの角度がキャンバスのように見やすい位置にくるだけでなく、上と下と両方でひっぱりあっているので、とてもバランスがよいのです。このスタイルがブータンの緻密で打ち込みの強い織りを可能にしているのだと思います。

キラ

輪状整経で織ったところは少しずつずらしていきます。織りはじめたところが機の後ろ側を通ってぐるりと回って見えてきています。

タペストリー

こちらは以前織った布。民族衣装より幅が狭いのでタペストリーです。アンティークな織物からヒントを得たデザインだそうです。見たときには、織物からオーラを感じてゾクゾクしました。。実は彼女は生まれつき障害があって言葉を話せないのですが、他の地域ならお世話される人になってしまうのに、ここでは立派に経済的にも自立して力強くてほんとうにかっこいいと思いました。

牛

スマホのアラームが鳴って急に外にでたら、牛の乳搾り。この牛のミルクでバターやチーズを作り、チーズで味付けした美味しいお料理をつくります。そういえば、織りの模様に「牛の歯」がよくでてきますが、牛は一番身近な存在なんですね。

名人

もうひとり織りの名人を訪ねました。彼女が織ったキラを王妃様が結婚のお披露目で着用されたそうです。ふつうは同じものは2枚は織らないのですが、そんな特別なことがあったので、同じものを織りました。隣はだんなさま。おんぶ紐見えますか?背中に赤ちゃんが眠っています。ゲンパカップでは女性が機織り、男性が育児と家事の担当です。

キラ

首都ティンプーからゲンパカップまで最短3日。悪路や簡素な宿泊が旅の醍醐味と思える方は、一度行ってみてはいかがでしょう?時代が変わりすぎないうちに。