ブラ(野蚕糸)はブータン織物の糸 Bura – Bhutanese textiles

ブータンには「ブラ」と呼ばれる糸があり、その糸で織った織物も「ブラ」と呼びます。

ブ=虫、ラ=布。つまり、シルクのことですが、家蚕のシルクではなくて、エリ蚕という種類の野蚕のシルクです。

ブラ織物の特産地は、東部のラディ地方です。女性の衣装にもなりますが、男性の晴れ着の定番。ずっしりとした重み、経年とともに出てくる光沢感。この糸ならではの美しい織物です。

ブラ織物
ラディ地方の典型的なブラ織物

 

昔はブータン国内でも少しはエリ蚕を育てていましたが、今はお隣のアッサム(インド)から買っています。今でこそ国境がありますが、もともとひとつの文化圏と考えたほうが良い地域です。

エリ蚕の繭は家蚕の繭のように長い一本の糸をひくことができないので(いちおう繋がってはいるらしいのですが、太いところ細いところがあったり複雑に絡んでいてすぐに切れてしまう)、綿のようにつむいで糸にしています。

インドでは「貧乏人のシルク」と言われて、美しいサリーなどの素材になることはなく、もっぱらブランケットなどに利用されてきました。ところが、ブータンにくるとエリ蚕の糸は高級な「ブラ織物」になるのです😊

エリ蚕
つのつのしていてかわいいエリ蚕の幼虫、バナナの葉の蔟とエリ蚕の繭

 

Kelzang handicraftのジャンベさんは、このブラの糸をショールやテーブルマットなどにも使っています。ロックダウンの期間中に、草木染のブラ糸を使って帯を織っていただきました。ブラの素朴な感じは好きな人と魅力を感じない人とに分かれると思いますが、温かみのある織物、私は好きです。

ブラ糸の帯
地糸は綿、模様糸はジャンベさんが草木染をしたブラ糸。この感触、好きです。

 

帯を1本織るのは大変だし、値段もそれなりなので、短い帯(?)をたくさん織ってもらいました。ブラの感触をたくさんの方に感じていただけたらなぁ、と思っています。

ブラ織物の栞
草木染のブラ糸で模様を織り込んだ短い帯?をたくさん織っていただきました