【本の紹介】バーソロミューコレクション/ブータンの染織 紫紅社 絶版前に確保しましょう!

バーソロミューコレクション

織物の国ブータン。現在の織りも素晴らしいのですが、ほんの少し前の時代には、もっともっと力強く多様な染織文化がありました。それを知るための貴重な本です。

出版社での在庫も少なくなってきているようです。中古本も今後はどんどん値上がりしていくでしょう。ぜひ今のうちに確保しておかれることをおすすめします。

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19世紀のキラ。綿地にびっしりとブラ(エリ蚕の紬糸)で模様が織り込まれている。ラックの赤い色が印象的。この頃は縦のストライプ模様と両端(写真の上下)にボーダーが織り込まれているのが特徴。バーソロミューコレクション

 

現在では博物館でしか見られなくなった「キシュン」と呼ばれる貫頭衣。多くはイラクサで織られている。動物模様なども特徴的。東部地方ではキラの前には貫頭衣を着ていたと言われる。貫頭衣に使われた片面縫取織りの技術を持つ織り手たちが、今度は四角い形のキラに模様を織り始め、今の華やかなキラになっていたのではないだろうか、と写真を見て想像する。

バーソロミューコレクション

 

寒冷なブムタン地方のウールの「ヤタ織物」。初代、2代国王が住んだブムタンには東部から織り手たちが連れてこられ、綾織の厚手のウールの織物に得意の縫取織りをほどこして華やかなヤタになっていったのだろう、と想像する。現在は高機で織られるヤタも以前は腰機で織られていた。その技術を持つ人がまだ健在なうちに、習いに行きたい、、、とまた焦る気持ちが湧いてくる。ブムタンに行けば今もヤタを織っているが、糸はほとんどインドからの輸入糸。この織物のもつ暖かみは、ブータンの羊やヤクたちの糸ならではのもの。

バーソロミューコレクション

 

女性の帯はこんなに太かった。最初は赤(おそらくラック)と青(琉球藍)。そして黒もよく目にするが、この真っ黒は何で染めていたのだろう。黒く染める化学染料が入っていたのだろうか。この後、織り手のときめきがあふれるカラフルな帯の時代がやってくる。そして形も変わってカード織りの細身の帯に変化していく。

バーソロミューコレクション

 

王様の帽子、宗教的な衣装。右の写真、ずっしりとしたシルバー細工は女性の衣装をとめるブローチやブレスレット、ドマ(ビンロウ)の実と石灰を入れる容器など。高価なものだが庶民も手にしていた。

バーソロミューコレクション

 

織りの様子。今もほとんど変わらないが、左ページの右上には、腰機でヤタを織る人の写真が載っている。この1枚はとても貴重。右の縫取り織り写真は高機だろうか?「マタ」と書かれているが、黄色と黒の細い線の入っているのでたぶん「セタ」。

バーソロミューコレクション

 

貫頭衣シンカを着た女性たちの写真は珍しい。宮廷のおかかえ織り子さんたち。きっと「写真を撮る」ということで、古い貫頭衣を持ち出してきてモデルになってくれたのだろう。

バーソロミューコレクション

 

きっと今の織り手さんたちの技術で、この本に載っているものと同じものを織ることはできるだろうけれど、当時使われていた糸がもう手に入らない。古いものは大切にして、そして一生懸命活用されなくては、と思いました。